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「摂食嚥下障害 質問シート」ご活用事例紹介

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「摂食嚥下障害 質問シート」の活用によって嚥下障害に対して、
早期介入が可能に!

  • 静岡県富士市 メイプル薬局 松本店さま
  • 取材日:2018年5月30日

最初に、メイプル薬局さまの業態についてお聞かせください。

在宅サービスが徐々に増えてきています。 メイプル薬局は、静岡県東部に24店舗を展開しています。各店舗、外来の患者さんが主ですが、少しずつ在宅サービスを始めています。ここ松本店でも、居宅療養管理指導料が算定できない特別養護老人ホーム(特養)を除いて、現在、施設の利用者さん20名程度と3名程度の個人宅に伺っています。

この地域では移動にどうしても車が必要になり、高齢の方々は施設に入られるか在宅での介護サービスを受けられる方が多いように感じています。

「摂食嚥下障害 質問シート」はどのような経緯で導入されたのでしょうか?

以前から嚥下機能の評価は、その本人を含め評価を行う人の経験や感覚で行われてしまっていることが気になっていました。
施設に訪問させていただくようになってからは、医師の往診に同行する中で、実際に嚥下機能が低下している方をより多く見かけるようになりました。特に気になっていたのが、嚥下障害は明らかではないものの、「最近お薬を飲み込めない日があります」と言われるような方の存在でした。嚥下機能が明らかに低下している方には、食事にしても薬剤についても相応の指示が出ていました。

しかし、そこまで嚥下機能低下が顕著ではない方には、その対応も曖昧で、粉砕指示をいただくケースでも飲みづらそうだからといった感覚的な評価でしかないようでした。また、医師に相談する上でも、どのような段階になったらその対処を始めるかについての具体的な線引きができないかと考えていたところでした。

質問に答えてくださる管理薬剤師の小澤先生

そんな時、この「摂食嚥下障害 質問シート」に出会いました。これなら摂食嚥下障害を客観的に評価できるし、患者さんや入所者の(嚥下機能に関する)情報も共有しやすいのではないかと思い、実際に活用してみることにしました。施設のケアマネさんや看護師さんに相談したところ、快く協力していただけました。

どのようにご活用を進められましたか?

6店舗で「摂食嚥下障害 質問シート」を使った嚥下機能評価を実施しました
メイプル薬局の薬局事業推進室で他店舗の薬剤師にも相談したところ、同様の悩みを持っているとのことで、賛同を得た6店舗で「摂食嚥下障害 質問シート」を使った嚥下機能評価を実施することになりました。

具体的な評価方法としては、施設ではスタッフの方や看護師さんに、個人宅ではケアマネージャーさんや同居の家族の方に協力してもらい、ご本人でなくても分かる項目、周囲の観察で分かる項目は事前にチェックしていただきました。その上で、薬剤師がご本人と面会し、ご本人にしか分からない項目を中心にチェックしました。周りの方に協力をいただくことで、認知機能が低下した方の評価も可能となり、また、ご本人への負担が軽減すると考えました。

結果的に、グループホーム65名、小規模多機能ホーム3名、サービス付き高齢者向け住宅15名、有料老人ホーム17名、個人宅6名の計106名の方々に対する評価を行うことができました。

ご検討結果について教えてください。

見た目だけでは嚥下障害があるとまでは判断できない人も抽出されました。
「摂食嚥下障害 質問シート」は、15の質問項目からなり、それぞれの項目についてその程度をA(「しばしば」など)、B(「ときどき」など)、C(なし)の3段階で評価します。A評価がひとつでもあれば「摂食嚥下障害の可能性が高い」ことになります。

まず興味深かったのは、周りの方とご本人との間で評価が分かれることが少なくなかったことです。例えば、「口の中に食べ物が残ることがありますか?」の問いに対して、ご本人は時間がかかってでも飲み込めていれば「なし」と回答されていました。
結果的に30人、約28%の方が「摂食嚥下障害の可能性が高い」に該当していました(図1)。また、A評価がなく、ひとつでもB評価があった方を「疑いあり」とすると42例、約40%が該当しました。

「摂食嚥下障害の可能性が高い」とされた30人の中には、これまで見過ごしていた方が10名も含まれていました。この10名については、今回の調査が早期介入のきっかけとなりました。内訳は剤形検討が5名、実際の剤形変更が4名、食事変更が1名、服薬補助により服薬状況改善が1名でした(図2)。

全体30人に対して摂食嚥下障害能力のグレードを評価したところ、重症1名、中等症9名、軽症21名であり、新規抽出の10名はすべて軽症例でした。この中には見た目だけでは対策が必要と思われないであろう人も含まれていました。また、年齢との関連では、90歳以上が16名と最も多く、80〜89歳が10名と80歳以上の方が多くを占める一方で、70歳未満の方も2名見つかっています。

図1:「摂食嚥下障害 質問シート」による評価の結果
(n=106)
第50回東海薬剤師会学術大会ポスター発表資料より
(メイプル薬局 小澤先生より提供)
図2:新規に嚥下障害が抽出された10名に対する介入の実際
第50回東海薬剤師会学術大会ポスター発表資料より
(メイプル薬局 小澤先生より提供)

ご検討結果からどのようなことが言えるのでしょうか?

「摂食嚥下障害 質問シート」によって嚥下機能の客観点評価が早期にそして簡便に行うことが可能になりました。特に、新しい施設や入所者では、以前の状態が確認しづらいので、この質問シートは有効で、対象者の抽出にも役立ちます。

なお、「摂食嚥下障害 質問シート」については、ご本人に限らず、ご本人をよく知る第三者による評価も有用と考えられました。まずはその第三者に回答可能な項目について評価してもらって、それを参考に薬剤師がご本人と面談を行うことが有効と考えられます。最終的に薬剤師が評価することによって嚥下障害の原因を推定することができ、それに対する具体的な対処法につなげることもできるのです。

摂食嚥下障害質問シートを用いて、ケアスタッフさんとご利用者さまの摂食嚥下状態を確認している様子
*ご協力施設:株式会社アクタガワ ハートフルホーム開北

今回、検討を実施して、この質問シートを用いることが施設スタッフの方や看護師さん、さらにはより患者さんの身近で食事の世話などをされている方々とのよいコミュニケーションの機会にもなったと感じています。また、このように客観的な評価ができることは医師と話をしていく上でも有用性が高いと考えられました。

「摂食嚥下障害 質問シート」を用いることでどのような介入が可能になりますか?

より早期からの対応が可能になることが一番の利点だと思います。
「摂食嚥下障害 質問シート」によって摂食嚥下障害が見つかった方に対しては、OD錠や湿製錠®への切り替え、そして薬剤の変更や減薬(1日の服用回数も含め)を積極的に医師と相談していきたいと思います。一方、OD錠などに切り替えても吐き出してしまう患者さんもいらっしゃいますが、そのような場合には粉砕での対応が必要となります。

また、現時点でA評価がなくても、B評価がいくつかあった方は継続的に観察していくことで、摂食嚥下障害が出始めた段階で速やかに対応でき、影響を最小限に食い止めることができると思います。自分で食事をするという行為は、体力を維持して健康な状態を保っていく上でも重要です。誤嚥性肺炎のリスク回避、あるいは発症してしまった場合の治癒力とも関係してくるのではないでしょうか。

摂食嚥下障害質問シートを用いて、ご利用者さまにご自身の摂食嚥下状態を確認している様子
*ご協力施設:株式会社アクタガワ ハートフルホーム開北

今後、「摂食嚥下障害 質問シート」をどのように活用していかれますか?

外来や特別養護老人ホームにも展開していきたいと考えています。
当店舗でも多くを占める外来患者さんにも適用していきたいと考えています。90歳代の方が歩いて処方箋を持って来られていますし、ご家族に依頼して評価していただくことも可能だと思います。私たちの検討結果では70歳未満の方にも摂食嚥下障害が見つかっており、今後、広く調査していくことで摂食嚥下障害の啓発活動にもなり、またその早期発見・早期介入につながるものと期待しています。

今回検討できなかった特別養護老人ホームにおけるニーズも高いと思います。全体的に体力が落ちた方が多くおられ、実際に薬剤の剤形変更や粉砕依頼も多くいただいています。今後、薬剤服用歴管理指導料でかかわっていくなどさらに介入の機会を増やしていきたいと思っています。

ありがとうございました。

取材ご協力

メイプル薬局 松本店
http://e-maple.com/
〒416-0903 静岡県富士市松本51-18
TEL:0545-60-1800 FAX:0545-60-1811

質問シートを活用してみたい方はコチラ

15問で患者さんの飲み込みをチェック 摂食嚥下障害 質問シート